研究科教授より胃癌臨床研究基礎研究食道癌消化管GIST乳腺甲状腺腹腔鏡手術外科侵襲学英語論文一覧 |
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研究について当教室の母体は、胃カメラ開発を行った東大分院旧第三外科であるが、病院の統合および大学院部局化により、これまでの臨床、研究の実績に基づいて臓器病態外科学講座 消化管外科学と代謝栄養内分泌外科学の二つの分野として活動している。現在、教授1名、助教授1名、講師3名、助手11名で構成されており、これ以外に大学院生13名、 研究生2名、海外留学生3名が研究に従事している。 研究テーマについて当教室の研究の基本テーマは「炎症と外科」(Inflammation and Surgery) である。 炎症には大きく分けて「慢性炎症」と「急性炎症」とがあり、それぞれを背景として様々 な外科的疾患が発生する。とくに消化器癌の発生においては、多種多様な原因による慢 性炎症に対する生体の適応反応からの逸脱が癌発生の本態であり、そのメカニズムの解析により新たな癌の診断、治療・予防の展望が開かれてくるものと考えている。 主な研究内容について消化器癌、とくに胃癌の発生の研究慢性炎症と癌の発生のメカニズムを検討する意味で、これまで様々な発癌モデルを作 成して検討を行ってきた。その代表的なものとして、愛知県がんセンター研究所との共同研究により、Helicobacter pylori 感染が胃発癌と密接に関連すること、そして除菌に より胃癌の発生の予防が可能であることを、世界で始めて実験的に証明して来た。また、胃切除後には十二指腸液胃内逆流のみならず胃粘膜への神経支配の脱落が残胃粘膜での 炎症を増強し、残胃癌の発生に重要な役割を果たすことを明らかにし、その予防のための再建術式の工夫を行ってきている。 さらに、胃癌発生の前癌病変の探索に関する日米共同研究を推進しており、炎症により惹起される胃粘膜内の壁細胞の減少が発癌の大きなきっかけとなっている可能性を見いだし、遺伝子レベルでの研究へと臨床応用を目指している。 一方、発癌機序の解明と共に発癌予防の研究も重要である。そこで、核内リセプター の一つで細胞の分化・増殖に関わる因子であるPPARγを取り上げ、これが胃癌の発生を予防することを世界で初めて証明し、今後の臨床応用への可能性を検討している。 外科侵襲の研究外科手術に伴う「急性炎症」は、周術期管理において重要な課題である。現在、注目している研究課題は「交叉耐性」のメカニズムの解析と臨床応用である。生体は致死的な侵襲を受ける前に少量あるいは亜致死的な刺激を受けていると、次にもたらされる致 死的な侵襲に対して耐性(tolerance)を獲得し、生き延びることが知られている。さらにこの現象は異なった刺激を与えても同様の結果が得られており,これを交差耐性 (cross tolerance)と呼んでいる。 このメカニズムを応用することにより、手術侵襲の軽減がもたらされ、癌に対する拡大郭清の適応拡大、高齢者に対する拡大手術の可能性が拡がる。また、外科的侵襲を受けたときの反応には性差があることを我々の研究で確認して来たが、そのメカニズムの解析と臨床応用も視野に入れて研究している。 乳癌の研究乳癌の外科的治療はほぼ確立したが、ホルモン・化学療法については今後の課題である。とくに新しい分子標的治療剤やホルモン関連酵素阻害剤などの適応については、個々の症例に応じた細かな治療選択が求められている。それらの感受性の検索においては、 遺伝子レベルのみならず蛋白レベルでの解析が必要でありプロテオミクスを応用した検討を開始している。また、ホルモンは核内のリセプターを介してその作用を発揮するが、 そのメカニズムの解析は乳癌の発生・進展・予防にとって重要な鍵となり、この面での研究を開始している。 甲状腺癌の研究甲状腺疾患においては、とくに濾胞腺癌と濾胞腺腫との鑑別診断が重要であるが、当 教室で開発したテロメラーゼのmRNAに対するin situ hybridizationによる鑑別診断 法が特許を得ている。さらに、自家蛍光を利用したわが国では初めての新しい in situ hybridization法を考案し、甲状腺疾患、乳癌、さらには食道癌、胃癌の診断への応用を行っている。また、甲状腺癌の予後におよぼすアポトーシス関連遺伝子の研究を行っている。 以上のごとく、消化器外科における研究と術後や侵襲に対する生体反応を研究する外科代謝栄養、そして乳腺・内分泌疾患を研究する内分泌外科は共通する基礎的課題があり、狭い分野にとらわれることなく広い視点から、消化管外科学と代謝栄養内分泌外科学が密接に協力して研究活動を展開している。そして、もう一つ重要な点は、臨床教室としての基本から、これまで述べてきたように研究室での成果を臨床と密接に関係づけ ること、すなわち Translational Researchを目指している。 研究組織について臨床的問題を起点に研究課題を設定し、食道グループ、胃グループ、侵襲・代謝グルー プ、乳腺グループ、内分泌グループに分かれてるが、多くは複数のグループに参加して横断的な研究活動を行っている。また、研究の幅と深さを高める目的で、他施設への大 学院生の派遣と共同研究を積極的に推進している。 現在、共同研究などを行っている施設は以下のごとくである。 ・東京大学医学系研究科 人体病理学 消化器内科学 ・東京大学分子細胞生物学研究所 核内情報研究分野 ・東京大学国際・産学協同研究センター ゲノムサイエンス ・東京大学医科学研究所 プロテオーム解析 ・国立がんセンター研究所 発癌研究部 腫瘍ゲノム解析・情報研究部 ・国立がんセンター研究所支所 がん治療開発部 ・愛知県がんセンター研究所 腫瘍病理部 ・東京医科歯科大学 ゲノム応用医学研究部門 ・国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部 ・東京都老人総合研究所 臨床病理部門 ・Vanderbilt University ・Johns Hopkins University ・Harvard Medical School 関連学会これらの研究を全国的に展開するために、当教室から発足した学会が二つある。 ・日本外科代謝栄養学会(1965年〜) ・日本消化器癌発生学会(1989年〜) 研究課題消化管外科学分野1.消化器癌の発癌
2.消化管疾患に対する診断・治療
代謝栄養内分泌外科分野1.代謝栄養・生体反応
2.乳腺・甲状腺疾患
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