瀬戸泰之教授挨拶
私は昨年5月に着任いたしました。それまでは、癌研有明病院に上部消化管(胃・食道)外科担当部長として勤務しておりました。癌研病院ではおよそ年500例の胃癌と100例の食道癌手術が行われています。ほか、乳癌では約1000例の手術が行われており、日本でも有数の癌専門病院まで発展いたしました。東大病院でも最新・最善の治療を受けていただくことが自分の責務と考え、引き続き、患者さんにとってベストの治療を追求していく所存です。
「すべては患者さんのために」
当教室では、従来からの伝統である癌発生学を通じて癌発生の予防を追求する研究、また外科侵襲学を通じて生体のバランスを維持する研究を行っています。また、大学病院には、最善の標準治療を行う傍ら、あらたな治療法を創造していく責任もあると考えています。現在、癌に対する治療法は外科療法(手術)、化学療法(抗がん剤)、放射線療法、内視鏡治療、免疫療法があり、我々は他科とも密接に協力しながら、これらすべての治療を行っています。いずれの治療にも長所・短所があり、手術においては、癌に対する根治性を保ちつつ、患者さんの術後のダメージや負担をいかに軽減するかが、我々の課題と考えています。患者さんのための新たな手術術式を目指して、鋭意研究を開始しています。その一環として、胃腫瘍に対して、臍一か所からだけで腫瘍部分を切除摘出する手術(SILS: Single Incision Laparoscopic Surgery)を世界に先がけて行いました。今後、様々な技術進化のもと、さらにこの技術を発展させていくつもりです。また、食道癌や胃癌術後で、食道や胃を切除されてしまった方々の食生活改善のため、迷走神経機能回復や食欲増進ホルモンであるグレリンなどの研究をすすめております。患者さんのメリットとなるような知見がえられましたら、すみやかにfeed backしていきたいと考えています。
2009年8月 瀬戸 泰之