乳腺内分泌外科

東京大学医学部附属病院 胃食道・乳腺内分泌外科

胃食道外科

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東大病院乳腺内分泌外科では、乳癌・甲状腺・副甲状腺疾患の診断・治療を乳腺専門医・認定医や甲状腺外科専門医が行っています。さらに最新で、適切な診断や治療を目指すため、外来担当医個人による治療方針の決定は行わず、科医局員全員で個々の症例の診断や治療方針を練り上げます。このようなプロセスで得られた最終結論は、外来担当医を通じて患者様にお伝えし、治療計画を立てます。
国立大学病院では、医師数の定員や外来枠、手術数の上限が決められているため、基幹センター病院などのように多くの症例をこなすことはできません。それに加え、前述のように科で検討を加えつつ方針を決めていますので、流れ作業のような手術はできないのです。この状況下でも年々症例数は増加していて、当科における乳癌手術症例は年間約170例、甲状腺手術は約100例を数えています。(表1:乳腺内分泌外科手術症例数の推移参照)

1) 手術や入院期間について

外来で手術が決まると、実際の手術日は約1ヵ月後になります。通常1ヵ月後まで、手術予定患者の予約が入っているからです。しかし、治療を急ぐ症例は、緊急枠を利用して手術を早めることがあります。
多くの手術は全身麻酔により行います。全身麻酔は、局所麻酔に比べると麻酔中毒や麻酔事故が少なく、一番安全な麻酔法と言われています。加えて当院は、麻酔医のスタッフ数に恵まれた病院です。当科の手術では、2000年以降麻酔事故は起こっていません。
乳腺や甲状腺の手術は、比較的侵襲の少ない手術です。手術に伴う入院期間は1週間以内がほとんどです。傷の手当や抜糸は、退院後の外来通院で行います。
術後のケアは、責任を持って行います。通常の術後検診はもとより、再発や緩和ケアについても最新の治療を提供します。

2)乳腺外来診療の実際

検診、他院でマンモグラフィー、超音波などの検査を受けられ「所見あり」といわれた方

初診外来にて予約をお取りになり受診してください。できれば「紹介状」「レントゲン写真」などの資料を、ご紹介元の先生にお願いして発行していただき、併せて御持参ください。当科初診担当医師は、日本乳癌学会乳腺専門医や認定医が診療に当たっています。一人の医師だけの診療ではなく、科全体で患者様の病態を把握するように努めています。診断や治療方針を正確に進めるためです。

 

なんとなく恥ずかしいので、女性医師の診察を希望される方

女性医師は2名体制で週2回外来を担当しています。予約をお取りになる際に、御希望をお伝えください。

 

当科外来受診後、紹介医療機関の資料では読影が不十分な場合、再度マンモグラフィーまたは超音波検査を行うことがあります。

 

所見がな場合

経過観察となります。

何らかの所見がある場合

細胞診、組織診などの病理検査を行います。             

 

良性と判定された場合:経過観察です

 

悪性の疑いと判定された場合

CT, MRI、骨シンチなどの追加検査をします。転移の有無を調べるためです。

遠隔転移がない場合:手術をお勧めします。

    

腫瘍が大きい場合、わきの下のリンパ節に転移が疑われる場合
乳房皮膚が赤くなり、炎症を起こしたようになっている場合

乳癌は抗癌剤が効きやすい癌です。
したがって抗癌剤による治療を先行する場合があります。
これにより 乳房温存手術が可能になることがあります
さらに、ケースによりリンパ節転移や癌そのものが消失することがあります

 

自覚症状はないが、不安なので乳癌検診を受けたい

東大病院乳腺内分泌外科の一般診療は、乳癌の術前術後患者様、再発治療の患者様、補助化学療法の患者様の診療のみを行っています。
↓ 
検診は行っていません

理由は

診療スタッフに、検診を行う人的、時間的余裕がない

乳腺の疾患がない場合、保険診療では対応できないから


東大病院で検診されたい方→「検診部」という、検診専門の科があります。
ここでの検診をお勧めいたします。

東大病院にはこだわらない方→癌検診センターなど、検診専門の機関があります。また、職場や市町村の乳癌検診を受ける、こともお勧めします

 

3) 乳腺にしこりを自覚する、他院で「乳癌の疑いがある」と言われた

診察は予約制となっております。紹介状を御用意の上、診療予約をお取りになってから御来院ください。

紹介状なしで受診される場合、特定療養費の対象となり診察料と別に料金がかかります。診察予約については予約センターにご相談ください。

4) 乳癌の診断がついた場合の治療

乳癌は、大きさや腋窩リンパ節転移の有無で、治療方針が大きく変わってきます。加えて、腫瘍の性質が治療薬の選択に大きく影響します。具体的には、卵巣から出る、エストロゲンやプロゲステロンという女性ホルモンに依存して増殖する腫瘍かどうか、HER2という増殖因子の受容体があるか否か、は治療上大変重要な情報です。このような情報は、腫瘍組織を病理学的に調べないとわかりませんので、手術で摘出した腫瘍を詳しく調べます。手術前に情報を得たい場合には、少し太めの針を穿刺し、組織を採取します。これを「針生検」といいます。次に個々ケースに分類して説明します。

腫瘍が3cm以下の大きさで、手術前に超音波などで腋窩のリンパ節に転移がなさそうな場合:

乳房温存手術に加え、センチネルリンパ節生検という手術を加えます。センチネルリンパ節とは、癌がリンパの流れに乗って最初に到達するリンパ節のことです。乳腺はほとんど腋窩リンパ節に集中しますので、手術中に色素を乳房に注入し、センチネルリンパ節を探します。ほぼ90%以上はこの方法でセンチネルリンパ節が見つかりますので、これを取り出し、手術中に迅速病理診断を行います。これで転移が見られない場合、これ以上のリンパ節の切除は行いません。 センチネルリンパ節だけの切除でいいのかどうかは、現在世界的に大規模臨床試験が進行中ですが、乳癌診療ガイドラインでは、推奨グレードB(日常診療で推奨される)として提示されています。乳房温存療法を行った場合には、術後必ず手術した乳房に放射線照射を加えます。局所の再発率が抑えられるからです。

腋窩のリンパ節転移がありそうな症例:

超音波検査などで腋窩のリンパ節が腫大している場合、従来行われてきた腋窩リンパ節郭清を行います

手術中センチネルリンパ節に転移があることが判明した場合:

腋窩リンパ節郭清を行います。この場合、腋窩の切開創は長くなります

 

腋窩リンパ節転移はなさそうだが、腫瘍の大きさが5cm以上ある場合:

乳房切除術を行います。乳腺は全部摘出しますが、その下の筋肉は温存します。加えて腋窩リンパ節郭清を行います。腫瘍の縮小を期待して、手術前に化学療法を行うことがあります。これを、術前化学療法と呼んでいます。メリットは、腫瘍の縮小により乳房温存手術が出来る可能性が出てくることです

腋窩リンパ節転移はなさそうで、腫瘍の大きさは5cmに満たないが、腫瘍が乳頭の近傍にある場合:

乳房切除術を行います。乳腺は全部摘出しますが、その下の筋肉は温存します。腫瘍の縮小により乳房温存手術が出来る可能性が出てくることを期待して、術前化学療法を行う場合もあります

腋窩リンパ節に加えて、鎖骨下や鎖骨上、胸骨傍リンパ節転移が疑われる場合:術前化学療法を行います。リンパ節の腫れがなくなったら、局所コントロールのため乳房切除術を行います。手術で得られた組織より、癌の性質を詳しく調べその後の治療の情報を得ます

骨や肝臓、肺に転移が認められる場合:

まず、抗癌剤や分子標的療法剤による化学療法を行います。遠隔転移がコントロールできなくても、乳房の腫瘍により将来出血や疼痛が生じることがあるので、乳房切除も行います。転移臓器によっては放射線治療もあわせて行います。ホルモン感受性がある場合、ホルモン療法を行う場合もあります。骨転移の場合には、ビスフォスフォネートという骨を強くする薬剤も使用します

非浸潤性乳管癌と診断された場合:

非浸潤性乳管癌は乳管のなかだけに癌が発生したもので、周囲のリンパ管や血管に浸潤していないため、転移はありません。したがって、腋窩のリンパ節郭清は必要なく、乳房の癌組織だけを摘出すればいいのですが、乳管のなかを広範に這って伸びることが多く、治療は乳房全摘を行うことが多い癌でした。しかし、マンモグラフィーなどで乳管への伸びが限局しているケースでは乳房温存術が行われています。(推奨グレードB)乳房温存術になった場合には、術後放射線照射が必要となります。

 

表1 東京大学附属病院・乳腺内分泌外科の手術症例推移 

 

 

 

 

 

 

術 式

12

11

10

09

08
(年)

乳房全摘術

69

62

58

33

34

乳房部分切除術
  (乳房温存率 %)

95
(58%
)

94
(60%)

107
(65%)

76
(70%)

83
(71%)

乳癌症例 小計

164

156

165

109

117

甲状腺亜全摘(悪性)

36

25

25

17

35

甲状腺亜全摘
  (バセドウ病)

0

2

2

4

2

甲状腺全摘

4

15

4

7

11

甲状腺部分切除

17

14

9

12

16

甲状腺症例 小計

57

56

40

40

64

副甲状腺切除

23

21

17

14

11

副甲状腺
 RI ナビゲーション手術

0

0

0

0

1

腹腔鏡補助下副腎切除

0

0

0

0

0

開腹副腎摘出

0

0

0

0 

0 

頚部リンパ節生検・郭清

13

11

7

6

14

腋窩リンパ節生検・郭清

16

17

10

13 

6 

その他 乳腺腫瘍
  (葉状腫瘍等含む)

18

17

13

10

11

中心静脈ポート留置術

8

13

18

24

5 

その他 手術

5

9

8

23

7

総計

301

300

278

240

236

 

 


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