食道胃接合部癌の手術を受けられた患者さんへ
研究課題「食道胃接合部癌の至適リンパ節郭清範囲を検討するための全国調査(多施設共同研究)」へのご協力のお願い
食道胃接合部とは食道筋層と胃筋層の境界と定義され、この上下2cmの部位を食道胃接合部領域と呼ばれます。この部に中心を持つ癌を特に食道胃接合部癌と言います。近年、この領域の癌は世界的に増加傾向となっており、我が国においても増加が予想されております。
食道と胃の境界に位置した癌ですので、食道癌あるいは胃癌のいずれに準じた手術治療を行うべきか、明確な指標が存在していません。実際に、この解剖学的特殊性から、各施設あるいは外科医によって、治療方針、特に外科手術において、差異があることも指摘されております。食道癌に準じた場合には右開胸食道亜全摘が、胃癌に準じた場合には非開胸拡大胃全摘が選択されることが多く、全く異なった切除範囲となることが分かります。
このように、同一疾患でありながら異なる手術が行われている現状を考えますと、今後予想される患者さんの増加傾向からも治療指針の策定は急務であると言えます。
食道胃接合部癌の標準治療を決定することを目的とし、日本食道学会と日本胃癌学会が合同で、食道胃接合部ワーキンググループが発足し定期的に会合を行い検討を重ねております。今回、標準術式を策定することを目的として、食道胃接合部癌の全国調査を日本食道学会・日本胃癌学会合同で実施することになりました。
切除する範囲は、“転移しているかもしれない”リンパ節の分布によります。転移リンパ節の取り残しがないようにするために切除する範囲が決められます。実際に、胃癌・食道癌は、過去に手術治療が行われた患者さんのデータに基づき、適正な郭清範囲(リンパ節を切除することを郭清と言います)が決められておりますが、食道胃接合部癌に限定した検討はなされておりません。どのリンパ節へどのくらいの頻度で転移しているのかを調べ、また、各リンパ節を郭清することによりどのくらい生存へ寄与しているかを計算し適正なリンパ節郭清範囲を検討致します。標準とすべき手術方法を決めることにつながる研究であると考えております。
当科では、東大病院において手術治療を受けられた食道胃接合部癌患者さんの以前のデータを収集致します。過去の診療録(問診や診察所見)、処置内容(手術記録、病理検査)、血液検査結果、放射線検査(X線検査、CT検査、MRI検査、PET検査)、内視鏡検査、などの日常診療で得られたデータを検討致しますので、追加で患者さんにお願いする検査・処置はございません。
この研究は過去の診療記録を用いて行われますので、該当する方の現在、未来の診療内容には全く影響を与えませんし、不利益を受けることもありません。解析にあたっては、個人情報は匿名化させていただき、その保護には十分に配慮いたします。当然ながら、学会や論文などによる結果発表に際しては、個人の特定が可能な情報はすべて削減されます。
この研究に関して不明な点がある場合、あるいはデータの使用に同意されない場合には、以下にご連絡頂きたいと思います。なお、本研究は、東京大学医学部の倫理委員会の承認を得ております。また、この研究への参加をお断りになった場合にも、将来的に当院における診療、治療の面で不利益を被ることはありませんので、ご安心ください。
【連絡先】
研究責任者:瀬戸泰之
連絡担当者:山下裕玄