食道癌の外科手術
食道癌の外科手術
食道癌手術は消化器外科領域でもっとも大きな手術のひとつです。時間もおよそ7-8時間かかります。それは、食道癌のほかの癌にはない特殊性からくるものです。食道はのどと胃をつなぐ臓器ですが、実は背中側(背骨の前)に位置しています。これがもっとも他の臓器と異なる点です。食道の前方には心臓や気管があり、左右には肺が位置しています。また、一番前方には胸骨があり、食道をとりだすためには、前方からは到達できません。通常は、右胸(わき)から到達します。CT画像がわかりやすいので示します。ほぼ胸の真ん中くらいの高さの断面像です。食道が背中側にあることがおわかりいただけると思います。
手術は切開、食道切除、リンパ節郭清、再建(食べ物の通り道を作りなおすこと)の4つで構成されています。リンパ節郭清とは、癌が転移しやすい場所にあるリンパ節をとってくることです。食道癌の特徴として、胸の中の癌周囲だけではなく、頸部(声帯を司る反回神経沿い)や腹部(胃の周囲)のリンパ節にも転移しやすいことが知られています。ですので、リンパ節郭清は頸部・胸部・腹部の3領域に及ぶ手術が標準的となっています。再建は通常、胃を細長く管状にして(胃管といいます)、頸部まで挙上して、食道とつなげる(吻合)方法がもっとも一般的となっています。
最近、早期食道癌に対しては、術後の疼痛を軽減するため、胸腔鏡補助下手術を行っています。
食道癌手術写真のページで、簡単に写真でご説明しています。
(傷口や手術中の臓器の写真が含まれますので、苦手な方はご遠慮ください。)
術後経過、合併症
通常は術後3週間で退院し、その際には食事は普通のおかずになっていますし、歩行もスムースに行えます。ただし、咳や痛みは数カ月続くことがあります。食事量も1回量が減ってしまうので、多くの方は5kg前後やせられます。術後2-3月で社会復帰される方が多いようです。ゴルフ、テニスなどの運動もそのくらいの時期からの再開をおすすめしています。
術後合併症としては、肺炎、出血、縫合不全(吻合がうまくくっつかないこと)、反回神経まひ(声がだしにくい、あるいはしゃがれてしまう)などが起こりえます。手術が大きいので、肺炎などをこじらせてしまい、残念ながら術後命を落とされてしまう方(手術死亡)も約1%いらっしゃいます。
最近6年間で(2003.4-癌研有明病院よりの通算)、411例の食道切除を行い、手術死亡(術後30日以内の死亡)は4例、1.0%でした。何としても0%にするため、新たな取り組みを始めています。
食道癌の予後
当科での最近の予後をグラフに示します。StageIII、IVの方々の改善が急務と考えています。